ドローン撮影の許可を調べると、国土交通省の許可・承認の解説がたくさん出てきます。けれど実際の撮影では、国の許可を持っていても、それだけでは飛ばせない場所があります。
この記事では、群馬県と長野県の県境にある毛無峠(標高約1,800m)で山の風景を撮るために、2026年10月にどこに・何を出し・何を言われたかを、手続きの順に書きます。国立公園と国有林にまたがり、片側の県道が通行止めという、手続きの多い場所でした。
なお、この撮影は弊社の代表が自分の作品として撮るもので、お客様のご依頼ではありません。書いているのは撮影の前の手続きまでです。
最初に、3つの軸で分けた
ドローンを飛ばせるかどうかは、大きく①航空法(国土交通省)②その場所の管理者 ③小型無人機等飛行禁止法(警察)の3つに分けて確かめます。1つでも欠けたら飛ばせません。このほかに、条例や道路の決まりなど、場所によって確かめるものが増えます(くわしくはドローンを飛ばす前に確かめることは、3つあります)。毛無峠を、この3つで分けると次のようになりました。
- ①航空法:山の中で、人口の集まった地区でも空港のまわりでもない。目で見えない所まで飛ばす・人や物に近づく飛び方は、持っている国の包括的な許可の範囲に入る。飛ばす前に、国のシステム(DIPS)へ飛行の計画を届ける
- ②場所の管理者:国立公園(環境省)と、国有林(森林管理署)の2つ。ここがいちばんの関門
- ③小型無人機等飛行禁止法:いちばん近い対象の施設まで約40km。おおむね1,000mの範囲には入らない見込み。飛ぶ前にもう一度地図で確かめる(小型無人機等飛行禁止法の1,000m)
国の許可で済むのは①だけです。②と③は、許可を持っていても別に確かめます。
どこに、何を出したか
群馬側の森林管理署:入林届を2つ
峠の群馬側は国有林です。管轄の森林管理署に電話で聞くと、「入林届を2つ、ホームページの様式で」とのことでした。1つは無人航空機の飛行のための入林届、もう1つはその他の目的の入林届です。飛行計画書、飛ぶ範囲と経路の図面、技能証明書と国の許可書の写しを添えて、メールで出しました。
届けの目的は「紅葉の撮影」ではなく「山の風景の撮影」と書きました。紅葉が早く終わっていても、届けと当日の撮影がずれないようにするためです。
出したのは撮影の予定日の10日前です。署の受け付けた印のある写しが届くまでには、このあと書く調整をはさんで1週間かかり、届いたのは予定日の3日前でした。山の撮影は、日にちに余裕を持って動くことをおすすめします。
長野側の森林管理署:届け出は不要だった
飛ぶ範囲が長野側にもかかるため、長野側の森林管理署にも電話をして、同じように入林届を出しました。そのあと署で調べていただいた結果、長野側の峠は国有林から外れていて、届け出は不要とのご連絡をいただきました。地図を見ただけでは分からず、聞いて初めて分かったことの一つです。
国立公園:環境省の事務所に電話で確認
峠は上信越高原国立公園の中にあります。国立公園は、群馬側と長野側で受け持つ環境省の事務所が分かれています。長野側の事務所に電話で確かめると、書類の提出は不要で、群馬側の事務所へはそこから伝えていただけるとのことでした。そのかわり、次のことを頼まれました。
- イヌワシを見かけたら、引き返すか中止する
- 観光客や登山の人が不快にならないようにする
- 万一落ちても、植物を踏み荒らさないよう自分で取りに行かず、連絡する
国立公園の中でのドローンの扱いは、事務所ごとに運用が違うことがあります。書類が要らなかったのは、この場所・このときの答えです。
長野側の土地:村役場に確認
長野側が国有林でないと分かったので、離着陸する場所の扱いを村役場に聞きました。折り返しのお電話で、規制はなく飛ばして大丈夫とのお答えでした。あわせて、観光客に配慮すること、群馬側の森林管理署と環境省の事務所に連絡を入れることを頼まれ、どちらも対応しました。土地の持ち主が誰かまでは、伺っていません。
届けを出したあとで、関係先との調整を求められた
群馬側の森林管理署からは、入林届を受けたうえで、関係先と調整して結果を知らせてほしい、というご連絡がありました。挙げられたのは、国立公園を管理する環境省の事務所、通行止めになっている県道の管理者、長野側の地権者などです。
環境省と村役場の答えは、上に書いたとおりです。県道については、通行止めの群馬側の区間は通らず、長野側から峠に入ることにしました。そして、道路の上は飛ばない、横切らない、と報告に書きました。
図面の経路が、県道を横切っていた
報告に添える図を作るため、届けた飛行経路と県道を1枚の地図に重ねました。すると、最初に出した図面の経路が、通行止めの県道の上を横切っていたことが分かりました。図面を作ったときに、経路と道路を重ねて確かめていなかったのです。
そこで経路を引き直しました。現地の形をよく知る代表が「駐車スペースの向こう側(道の外側)から飛ばせば、横切らずにまっすぐ行ける」と気づき、空中写真で確かめたうえで、駐車スペースの西の端から南へ約100mをまっすぐ往復する経路に決めました。図面の上では、道路と交わる所は0、道からは14m以上離れます。地図と空中写真からの計算なので、当日は現場で道の外側に立って確かめます。微妙な所は無理に飛ばさず、カメラの向きを変えて撮ることにしました。
この経路の図と調整の結果を森林管理署に報告し、その翌日、受け付けた印のある入林届の写しが届きました。
飛ばす前にすること
- 国のシステム(DIPS)に、飛行の計画を届ける。雨で日がずれても慌てないよう、予備日の分も届けた
- 前日と当日の朝に、天気と、近くの火山の噴火警戒レベルを見る
- 当日は、受け付けた印のある入林届の写し、国の許可書、技能証明書を持っていく
この実例から言えること
- 国の包括的な許可があっても、国立公園と国有林では、場所の管理者への確認が別に要る
- 県境をまたぐと窓口が分かれ、国有林かどうかで答えも変わる(群馬側は入林届が2つ、国有林でなかった長野側は不要)
- 届けを出したあとに、関係先との調整を求められることがある。日程には余裕を持つ
- 図面の飛行経路は、道路や建物と重ねて確かめてから出す
この話の限界
- ⚠ この記事は、2026年10月の、この場所での手続きと答えです。届けの数や期限、答えは、場所・時期・事務所によって変わります。
- ⚠ 国立公園の中でドローンが許可の要る行為に当たるかは、事務所ごとに確かめてください。条文だけで決めないでください。
弊社の考え方
弊社は、ご相談をいただいたら、最初に撮影する場所を伺い、3つの軸で飛ばせるかを確かめてから、お見積りと日程に進みます。手続きにかかる手間は、撮る時間より場所で決まるからです(ドローン空撮の費用は、飛ぶ時間より先に「その場所が飛ばせるか」で決まります)。
群馬県伊勢崎市を拠点に、空撮のご相談をお問い合わせから承っています。
出典(2026年10月確認)
- 関東森林管理局 吾妻森林管理署「国有林への入林」 https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/agatuma/nyuurin/nyurin.html
- 環境省「自然保護官事務所一覧」 https://www.env.go.jp/park/office.html
- 警察庁「小型無人機等飛行禁止法関係」 https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/index.html

